2.2. 複式簿記のコンセプト

GnuCashにデータを入力する時には、GnuCashはそのデータを3つのレベルに分類していくことに気をつけてください。ファイル、勘定科目、そして取引です。これらのレベルは複雑さの順に、表示されます。一つのファイルにはたくさんの勘定科目が含まれ、一つの勘定科目にはたくさんの取引が含まれます。この分類はGnuCashの使い方を理解するための基礎となります。

2.2.1. ファイル、勘定科目、そして取引

GnuCashはファイルを情報を格納するために使用します。GnuCashでは3種類のファイルを使用します。データファイル、バックアップファイル、そしてログファイルです。データを格納するのに使うメインのファイルはデータファイルです。家庭のデータのためは一つのデータファイルだけを使うことになるでしょう。しかし、GnuCashはデータファイルを保存するごとに、自動的にバックアップのためのコピーを保存します。GnuCashにはデータの再構築に使うことのできるログファイルも用意されています。バックアップとログファイルについては本章の後半で説明します。

勘定科目は所有したり、借りたり、支払ったり受け取ったりしているものを記録する場所です。データファイルを一つだけ利用していても、そのファイルにはたくさんの勘定科目が含まれています。保有、あるいは借りているお金はなんらかの勘定科目(口座)に属していることに心当たりがあることでしょう。たとえば、ある時、ある銀行の当座または普通預金口座を開設すると、その銀行が毎月、この口座(科目)にお金をいくら所有するかを記した明細書を送ってきます。クレジットカードの口座については、クレジットカード会社にいくら借りているのかを記した明細書が送られてきます。モーゲージ会社はローンで残りいくら借りているのかを記した明細書を定期的に送ってきます。

GnuCashでは、勘定科目は受け取ったり送ったりしたお金を分類分けするのにも使用します。明細書が送られてくる物理的な口座(勘定科目)でなくてもです。第3章で詳しく説明しますが、収益勘定科目は受け取ったお金(たとえば給与)を分類するのに使い、費用勘定科目は使ったお金(ピザ代、料金の支払い、など)を分類するのに使います。これら勘定科目は、他の財務プログラムでのカテゴリー機能に比べて、第3章で説明するような利点がある働きをします。

取引はある勘定科目から別の勘定科目へのお金の移動を表わします。お金を送ったり受け取ったり、勘定科目(口座)間を移動させたりすると、それはすべて取引になります。次の節でも見ていきますが、 GnuCashでは、取引には常に少なくとも2つの勘定科目が関係してきます。取引の例としては、たとえば、料金の支払い、普通預金口座から当座預金口座への振替、ピザの購入、現金の引き出し、給料の貯金などがあります。第4章ではGnuCashではどのように取引を入力するのか、詳しく見ていきます。

2.2.2. 複式記入

「お金は木にならない」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。お金はどこからかやってくるものであり、突然に「現われる」ものではないという意味です。複式簿記はお金がどこからやってきて、どこへ行くのか、を追跡できるよう記録する方法です。複式簿記を使うということは、お金は決して得られたり失なったりするというものではないことになります。同じ額のお金がある場所から他の場所へ常に移動するということです。現金を引き出すと、銀行口座から財布にお金は移動します。食料雑貨品店で小切手を切ると、お金は当座預金口座から食料雑貨品店へ移動します。給料を貯金すると、収入源から銀行口座へお金が移動します。

GnuCashでは、これらの移動は取引と呼びます。そして、一つの取引につき、少なくとも2つの勘定科目が必要となります。たとえば、現金の引き出しを記録する場合、銀行口座科目から現金科目へのお金の移動を入力します。食料雑貨品店で小切手を切ったことは、当座預金口座科目から食料雑貨費科目へお金を移動したものとして記録します。給料の貯金は、収入科目から銀行口座科目へのお金の移動として記録します。

従来の財務パッケージとは違い、GnuCashでは複式記入の取引の入力がとても簡単です。取引の入力については第4章で詳しく説明しますが、ここでどのようなものか、概要を説明します。小切手を切るような簡単な取引の場合は、二つの勘定科目、当座預金の勘定科目と費用の勘定科目をまず作成します。たとえば、食料雑貨品店で小切手を切るのであれば、当座預金口座の科目と食料雑貨費の勘定科目の両方が必要です。(勘定科目の作成の詳細については第3章を参照してください。)小切手の振り出しを記録するには、当座預金口座の科目から、食料雑貨費の科目へのお金の移動の取引を入力するだけです。この例の場合、GnuCashでの取引は当座預金口座の科目の記録簿ウインドウでは次のように表示されます。

簡単な取引

食料雑貨品店への50ドルの支払いについて、日付、説明、資金移動先科目を入力

この取引では50ドルの小切手が食料雑貨品店に対して切られています。複式簿記なので、少なくとも二つの勘定科目に影響があり、また、それらの科目が取引を構成していなければなりません。GnuCash は自動的に現在の勘定科目(資産:当座預金口座)を入力するので、関連する他の勘定科目(費用:食料雑貨)のみを入力すれば良いです。

GnuCashはあらゆる取引を複式記入の取引で記録していくことをわかりやすくするため、取引仕訳帳の形式の表示に変更し、どうなるのかを見てみましょう。

簡単な取引の取引仕訳帳表示

当座預金口座取引仕訳帳形式で表示

費用:食料雑貨への入金(借方記入)のエントリと、資産:当座預金口座からの出金(貸方記入)のエントリがあることに注目してください。

同じ取引が費用:食料雑貨勘定科目ではどのよう見えるのかをざっと見てみましょう。

費用:食料雑貨で簡単な取引を表示

食料雑貨取引仕訳帳形式で表示

注意

この複式簿記の例では食料雑貨品の支払いに当座預金口座を使ってきました。しかし、食料雑貨品の支払いに別の方法を使っても考え方は一緒であることに注意してください。クレジットカードを使うのであれば、複式簿記では当座預金口座の科目に対して請求が発生するのではなく、クレジットカードの科目に対して発生するというだけです。

給料についてはどうでしょう?お金は銀行口座に入りますが、どこから来たのでしょうか?複式簿記では、お金はどこかからかやって来るよりほかはありません。細かいことを言えば、お金は雇い主からやってきますが、雇い主の口座まで追跡する必要はないでしょう。では入ってきたお金はどのように扱うのでしょうか?GnuCashでは、入ってくる給料を記録するための、特別な収益タイプの科目収入を作成します。(収益科目を作成するための詳しい情報は第3章を参照してください)給料を記録するには、収益科目から、銀行口座科目へのお金の移動の取引を入力するだけです。

給料の入金は、GnuCashでは以下のように見えます。

簡単な給料の取引

コヨウ社から支払われた給料600ドルについて、日付、説明、資金移動先科目を入力

この例では、600ドルが収益科目の給料から、当座預金口座へ移動しています。第3章で詳しく解説しますが、収益科目には特別な性質があるので、この取引は当座預金口座科目の残高と、収益科目の残高の両方を移動した金額分だけ増やします。

給与総額と控除をすべて同時に記録するにはどうすればよいでしょうか?項4.2.2で説明するスプリットを使って入力できます。この種の取引では、一つの場所から複数の場所へ、金額の総計を移動できます。あらゆる複式記入の取引で、移動勘定科目から移動される金額の合計と、移動勘定科目へ入金される金額の合計は等しくなければなりません。

たとえば、給与総額が1000ドルだけれども、655ドルだけが当座預金口座に入金されたとします。差額の345ドルは連邦税、連邦保険拠出法税(FICA)や、州税などとして控除されたものです(訳注: 日本では所得税、住民税、各種保険等の控除を念頭に置いてください)。これをGnuCashではどのように計上するのでしょう?まず、給与総額(給料)、当座預金口座、そして各控除(第3章参照)それぞれの勘定科目を作成します。それから、1000ドルを給料科目から他の科目、具体的には当座預金口座連邦税メディケア税社会保障税州税・地方税、への移動の取引を入力します。複式記入の取引なので、これら五つの科目への移動金額の合計は、収益科目からの総額である1000ドルと等しくなければなりません。この種の取引の詳細は第4章で詳細に説明しますが、ここで簡単に見てみましょう:

給料の取引のスプリット

1000ドル給料をコヨウ社から支払いを受け、日付、説明、資金移動先科目を入力しています。そしてその取引を、当座預金口座連邦税メディケア税社会保障税、そして州税・地方税へ分割(スプリット)しています。

覚えておくべき中心となる原則は、各取引は少くとも二つの部分から構成されており、ある勘定科目の集合から移動した金額の総計と、別の勘定科目のセットに移動した金額の総計が必ず等しくなるということです。ある取引で、勘定科目から別の勘定科目に移動した総計が等しい時、その取引は平衡していると言います。GnuCashでは、複式記入と同様、取引すべてが平衡していて欲しいと思うことでしょう。

なぜこれが重要なのでしょうか?もし取引全てが平衡しているのであれば、お金はすべて計上されていることになります。GnuCashでは、お金がどこからやってきて、どこで使われたのかの記録を取っています。各取引に関係していくる全ての勘定科目の名称を記録することで、後から並べかえたり、レポートを見たりすることができるデータを入力します。レポートによって、一年でどのくらいのお金を稼いだのか、そしてどこに行ったのか、純資産はどのくらいか、税金はどこくらいになるのか、を把握することができます。取引を入力する時により詳しい情報を提供すればするほど、レポートはより詳しくなります。

会計用語

会計ではお金がどこから移動したのか、あるいはどこ移動したのかのかを記述するのに、借方貸方という用語を使用します。ある科目お金が移動してきた場合、そのお金は借方 (常に左の列) に記録されます。ある科目からお金が移動していった場合、そのお金は貸方 (常に右の列) に記録されます。お金は常にある勘定科目の右の列から、別の勘定科目の左の列に流れます。

会計の中心原則はこうなります:すべての取引において、借方の総計は貸方の総計と等しくなければなりません。 This is just another way of repeating the double entry rule, that for each transaction, the amount of money transferred from accounts must equal the amount transferred to other accounts

You don't have to use the terms debit and credit to use GnuCash, however. GnuCash account registers default to common column headings such as deposit and withdrawal - if you are more comfortable with those headings, use them. If you prefer the credit and debit headings, you can change the column headings to use accounting labels from the menu item Edit -> Preferences General (see 項2.4 for more detail on setting preferences).